平成20年に改築のため閉店したギンザ・コマツは、新たな姿に向けて目下工事が進行中であります。そのビルの工事に先駆けて、平成22年9月7日にあることが執り行われました。それは、ギンザ・コマツの屋上に位置し、ずっと見守り続けてくれたお社に関係したものでした。もちろんリニューアルした小松ストアーの建物屋上にも、新たな形となって、お社は置かれるのですが、そのお社に関連した催しとは……。
それは「鎮め物(しずめもの)」と呼ばれているもので、土地の神様を鎮め、土地や建物が揺らぐ事のないようにと執り行われるもの、いわば地鎮祭。祈祷・祈願のようなものを想像して頂くとよいかもしれません。無事、安全に工事が執り行われるようにという祈願。また新たな姿となった小松ストアーの繁栄を祈っての祈願とも言えます。そのような地鎮祭は、ビルの着工・竣工に携わる時、どこでも執り行われるのではないかと思われることでしょう。確かに、おそらく多くのビルが着工・竣工時に似たようなことをされていることかと思います。
それではなぜ、そこにクローズアップするのかと申しますと、今回の催しはお社と神を同じとした、三輪山・大神神社の宮司によって執り行われたということが、小松ストアーにとっては特別なのです。そこには、こだわりがあります。他で行われているものとは少し違う思いから、行われたものであることがお分かりいただけるでしょう。単なる地鎮祭にすぎないという訳ではないのです。
儀式自体は大変短いもので、大神神社から持参いただいた「鎮め物」を建物の土台となる土地に納めるというもの。文字にしてしまうと、ただそれだけのことではありますが、その一連の流れがひとしきり執り行われていく間、そこには大変神聖な時間が流れました。
たいした事ではない、とりとめも無いこと、しかし、そこには大きな意味があるというものが、私たちの生活には存在します。それは兼ねてから私たち日本人が行ってきた時節の行事にも、同じようなことが言えるかもしれません。
私たちの生活には、時節に関わるような行事が沢山あります。その催しは必ずしもやらなくてもいいことではありますが、それを行うことによって、日々の生活が豊かになったり、執り行うことによって感じられるものが沢山ある。そのような気持ちや文化を、お客様と分かち合いたいと願う小松ストアーならではの信条が、「鎮め物」を執り行うことに繋がったのかもしれません。やらなくてもいいこと。しかし、それを行ったことに、小松ストアーらしさが現れていると思っています。
新たに建つ土地に「鎮め物」を納め、屋上にはお社が建つ。その場所に新たなギンザ・コマツのビルは建つ訳ですが、下は「鎮め物」で清められた土地が、しっかりと土台を支えてくれている。そして、そこからまっすぐ上に突き抜けた屋上には、表情を新たにしたお社が上から見守ってくれている。上から下まで一貫して三輪山・大神神社に支えられたビルが建ちます。一本の筋が通ったような、しっかりとしたビルにしたい。そんな思いから、「鎮め物」は執り行われました。それは、つま先から頭の天辺まで同じ神様に見守って頂き、芯が通ったビルを作りたい。その上で、新たな再出発を切りたいという強い思いがあったからです。そこに、一本の筋が通った小松ストアーを感じていただけることでしょう。
また今回の「鎮め物」には、仕切り直しの意味が表された儀式であったとも捉えています。「鎮め物」は、そもそもの意を土地にいる神を鎮めることとしていますが、それは土地に仁義を切るようなこと。老舗ならではの時間、大切に培ってきた今までの歴史がある、その場所に心新たに再出発をきるというのは、なかなか簡単なようで難しいものであります。気持ちを新たに、再出発を仕切り直す、つまり仁義を切る。そんな思いも込められた、清めとしての「鎮め物」でもありました。
このような色々な思いが、再出発するギンザ・コマツに息づいていけばと、願いをこめた一日でありました。その様子を少しでも味わって頂けたらと、写真を一緒に掲載いたします。
今後、工事中のとりとめのない出来事を、新しい建物が完成するまでの記録として、こちらのブログに随時レポートしながら、紹介したいと思っています。楽しみに、お待ちください。