ギンザコマツには、西館7階から外階段を上ったところに屋上庭園があります。
太陽の光が降り注ぐここには芝生を敷き詰め、お客さまが散策しやすいように道を設けました。その一画には、小松ストアー時代、私たちが「銀座の天空神社」と呼んでいたお社も、新しく姿を変えて存在しています。
お社は、屋上庭園の構成を考えたうえ、天子南面(皇帝、天皇などは南に面して立つ)のならいに従って、屋上敷地の北側に磐座(いわくら)を配置し、大神神社の3つの鳥居を模した鳥居を造りました。神域と人間の住む俗界を区別する結界の意味を持つ鳥居には、伊勢の遷宮にも使用される樹齢300年になる御獄山の木曾檜(ヒノキ)を用いています。
そして大神神社が三輪山そのものを御神体とするのと同様に、鳥居の背面には磐座を囲むように梛(ナギ)、榊(サカキ)、木斛(モッコク)などを植えました。
南面は、南方を守護するといわれる朱雀(すざく)が守り神となることから、竹林に棲み、桐の実を食べて生きるといわれた鳳凰の故事にならい、孟宗竹と桐を配しました。
参道にあたる部分は、三和土(たたき)に最もよいとされる京都伏見の「深草土」を使用し、昔ながらの工法で、地元、泰明小学校の児童たちとともに造り上げました。
自然の素材である土とにがりと石灰だけを使い、人間の手で叩き締めることによって雨風に耐えうるものができることを、大都会東京の一画である銀座の屋上で子どもたちとともに実現できたのは、伝統を未来につなぐという意味においても意義があるのではないかと、ささやかながら自負しています。
またその参道の手前東側には、手水舎として、京都「五山の送り火」で知られる大文字山の太閤石で井桁の形に組んだ角井筒を備えました。井戸の両側には、水を浄化する作用があるといわれる紅梅と、ギンザコマツを営む小坂家の家紋でもある梶(カジ)の木を植えています。
屋上に神社を有する商業ビルは多々ありますが、聖地とされる一方で片隅にあり、暗く荒みがちな印象も拭えない中、ギンザコマツの「天空神社」は、空に開かれた屋上で、さまざまな植物を愛でながら小休止していただける場として、また銀座という街に立ち寄った際に、都会の真ん中に居ながらふっと気持ちが清められるようなスポットとして、みなさまにお立ち寄りいただける場となることを願っています。